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やさしい古典案内

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古典文学が気になる、でも古文は苦手でハードルが高い…。
そう思っている(私みたいな)人に、いい本があります!



それはこちら、『やさしい古典案内』。古典文学に興味が湧いて来た、でも原文はもちろん注釈付きでも骨が折れそう、そういう人にまずうってつけの入門書です。

「万葉集」「源氏物語」「枕草子」「伊勢物語」「土佐日記」「蜻蛉日記」「平家物語」「方丈記」「奥の細道」…。名前は知っているけど、高校時代に駆け足で習った以外、ほとんど触れたことがないという古典文学の数々。眠かったなー、古文の授業。っていう人はきっと多いはず(私はドンピシャそれ)。

古文の最大の難関は「読めない」ことでしょう。言葉は時代とともに変わっていくので、後世の人にとっては「解読」が必要な一種の外国語。そこで学校では「あり、おり、はべり、いまそがり」(だっけ?)みたいな暗号と格闘することになります。
でも、私の授業態度や感受性にこそ問題があったのはもちろん認めつつ、そこに書かれている内容や時代背景の概略をまず理解した上で臨めば、もうちょっとちがう印象になっていたのではないかなあ…と今になって思うのです。
古人たちも恋や仕事に悩んだり、将来や生死について考えたりする点では本質的に今の私たちと変わりません。また古来たくさんの歌に詠まれてきた月や花は今も変わらず目の前にあります。そのことに気付き始めると古典の世界が一気に近くなり、自分と地続きにあるように思えてくるのです。

本書はそういう意味でまさに「欲しかった一冊」。古典文学が書かれた時代背景やその成立過程を辿りながら、内容をごく分かりやすく噛み砕いて、現代の私たちにも親しみやすい形で紹介してくださいます。これでまず概略を俯瞰してから、興味を惹かれた作品の注釈本へと進むのも良さそうですね。

個人的にはいま奈良に住んでいることが古典への関心に大きく影響していると思います。長谷寺とか石山寺とか、近くにあり訪ねたこともある場所が古典の世界にはたびたび登場し、いっそう親しみと妄想を掻き立てられるのです。そして古典作品に触れ、また改めて訪ねてみたいと思う場所も増えつつあります。
史跡や名刹に限らず、古人もそこに生きたことを感じながら歩くと、この場所から豊穣なインスピレーションが湧き上がってくるのを感じないわけにはいきません。

やさしい古典案内_f0097528_121442.jpg■『やさしい古典案内』佐々木和歌子(角川学芸出版)
by pavilion-b | 2015-06-09 12:01 | 絵本と本のこと | Comments(0)