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オレンジの墓標

オレンジの墓標_f0097528_17554233.jpg今日は歌集をご紹介します。



私はこれまで歌集というものとは縁がありませんでした。進んで歌集を読むことはほとんどないですし、まして自分で短歌や俳句をひねるような趣味もありません。たぶん、そういう人は少なくないと思います。むしろ歌集に親しむ人の方が圧倒的少数ではないでしょうか(あくまでも私見です)。

でも実店舗をはじめたことで、人との出会いから詩集の面白さを教えていただいたように、今回もすてきな歌集と出会うことができました。この一冊が、今まで知らなかった(知ろうとしていなかった)現代短歌への扉を開いてくれた気がしています。
それがこの、山上秋恵さんによる第一歌集『オレンジの墓標』です。

山上さんはこれまで新聞歌壇やNHK短歌といった場で数多くの短歌、川柳を創作されてきました。このたびの第一歌集はそれらの投稿・入選歌を中心に編年体でまとめられた一冊です。
子ども時代の辛い過去にまつわる(と思われる)作品も含まれていて、読み始めるとそういった部分でしばしばハッとさせられるものの、重苦しさに引きずられるのではなく、不思議に澄んだ気持ちに胸が充たされます。ご本人もあとがきで触れていらっしゃいますが、暗い過去であったとしても、歌に向かうことでそれを乗り越えようとしてきた姿が読み手にも伝わるからかもしれません。そして多くの歌が色彩を伴った情景を浮かび上がらせます。私は素直に、歌って面白いな、と思いました。

また手に持つ悦びというものが、本であれば大なり小なりあるものですが、本書は(おそらくご本人の好みを反映して)とても可愛らしく、丁寧に装丁された本に仕上がっています。愛情を込めて大切に作られた本だと感じます。歌集というものは特にそういった部分を大事にするのかもしれませんね。
弊店でも取り扱いがございますので、ご興味のある方はぜひお手にとってご覧ください。

『オレンジの墓標』山上秋恵(青磁社)
by pavilion-b | 2015-12-02 17:51 | 絵本と本のこと | Comments(0)