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『戦争とおはぎとグリンピース』

『戦争とおはぎとグリンピース』_f0097528_20143690.jpg思わず手にとりました。



本書は1954(昭和29)年~63(同38)年に西日本新聞に掲載された、女性投稿欄「紅皿」における戦争関連の投稿をまとめたものです。
書き手は10代から70代まで、戦中・戦後の混乱期を生きた女性たち。素人らしく、多くが洗練されすぎた文章ではないために、かえって市井の肉声が聞こえるようです。

最近では戦後70年といった節目にも新聞、テレビ等で様々な戦争特集が組まれました。そんな記事や報道を目にするたびザワッとした胸騒ぎを覚えるのに、同時にぼんやりもしてしまうのです。それを不可解に思っていました。

投稿文を読むと、戦争とは人によってまったくそれぞれだということに改めて気付かされます。まして私たち後世の人間が歴史として戦争を見るときに往々にして語られる「ガダルカナル」も「インパール作戦」も、「大和」も「武蔵」も、多くの市民にとっては報道を通じてしか知らない出来事であり、当事者たちの戦争はただ身辺の日常にあったのではないか、という当たり前のことに思い至ります。

食うや食わずの毎日だから、食べ物にまつわる話も多い。母、妻、娘と立場は違えど、家族に滋養のある美味しいものを食べさせたいという願いは同じです。そのために着物を売り、夜なべのミシン仕事をこなし、ジャガイモを植える……。懸命な暮らしの中でも、女性らしい目線で日々の楽しみやほんの小さな喜びを見つけたりもしています。投稿欄からは時代の空気が伝わります。
読み終えた後、何気なくお米を研ぐ際にもふと当時の女性たちの気持ちを想像したりして、手先にいつもとちがうものを感じました。

『戦争とおはぎとグリーンピース』(西日本新聞社)
by pavilion-b | 2017-02-08 20:14 | 絵本と本のこと | Comments(0)