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小さな生きものたちの不思議なくらし

小さな生きものたちの不思議なくらし_f0097528_10144963.jpg『小さな生きものたちの不思議なくらし』は、『たんぽぽ』や『きゃべつばたけのいちにち』など、自然をテーマにした絵本をたくさん書かれている甲斐信枝さんの初エッセイです。



甲斐さんの絵がとても好きなのです。雑草ひとつでも油断なく描く丁寧な仕事ぶりに惹かれ、どんな気持ちで絵本を描かれているのだろう、と思いながらこの本を手に取りました。

雑草の来し方行く末を見つめるために、70平方メートルの畑跡を借り、5年に渡り観察を続けたお話が出てきます。それは「相手の生活リズムに自分を合わせれば、自然は扉を開いてくれる」という信念からです。
するとそこには驚くようなドラマが広がっていて、ひと時も退屈する暇がないのです。雑草にも栄枯盛衰があり、同じ植物がまた翌年も同じように繁茂することはなく、ほんの身近な距離でも互いの陣地を守って日々厳しい生存競争を繰り広げています。
私も通勤途中に見る空地で、一方はヒナゲシ、もう一方にはセイタカアワダチソウと、道を隔ててわずかな距離でも住み分けている景色に驚いたことがあります。そこも、年が変わるとまた別の植物が繁茂していました。注意深く観察してみると、本当に自然はふしぎな世界ですよね。

甲斐さんは懐中電灯を持ってたった一人真夜中のキャベツ畑に座り、キャベツが朝日を浴びてパリッと音を立てて開く様子に心を奪われたり、またある時はコガネグモにお刺身を与える実験をするなど、先入観に捕らわれない自由な発想で観察を続け、その驚きと感動を紙に写し取ってゆきます。
なぜそこまでするのか?その問いにはこう答えています。

「物語絵本のように心で受けとめられる科学絵本、そんな絵本でお子さんの心をすんなり自然に向けられたらいいですね。私は科学絵本を知識としてではなく、感動としてお子さんに伝えたいのです。」

1970年から40年以上に渡り科学絵本を作り続けている著者は、日々自然と向き合う中で、人間って何?と改めて考えさせられるといいます。

『小さな生きものたちの不思議なくらし』甲斐信枝(福音館書店)
by pavilion-b | 2015-09-09 10:14 | 絵本と本のこと | Comments(0)