2015年 12月 19日
日本語ぽこりぽこり
翻訳者の本を立て続けに読んでいて、翻訳ってスゴイなあと感心しきりです。
外国語の意味が分かるというだけでも大したものですが、翻訳となると数倍スゴイのだな、と改めて思うのです。単に語学力という枠に留まらず、各国の文化や歴史に深い理解と知識を有していなければできないからです。
例えばある原文に書かれてある事物が、翻訳しようとする国の言語にはそれを示す言葉がないとき(そういうことはしょっちゅうあるはず)、その意味を伝えるために何か本質的に似たものを探してきて例えるとか、場合によっては新しい言葉を作ったりして、置き換える必要があります。当然、双方の国の生活や文化まで幅広く深く理解していなければできません。
よく考えてみれば「通訳」「翻訳」と、日本語においても言葉が使い分けられていますね。
「通訳」は通常会話を訳して伝えることで、その場での置き換えですからスピードが優先で、意味は大方伝わればひとまず良いのではないかと思います。一方「翻訳」は通常書物を訳すことですから、意味に留まらずその「ニュアンスや背景も含んだ内容」を伝える必要があります。従って言葉の背後にある膨大な世界も見通していなければなりません。もちろんどちらも優れた語学力を要することは確かです。
そういう点からみても、例えば最近読んだアメリカ人のアーサー・ビナードさんなどは、まるで一人の中にアメリカ人と日本人の二人分がいるんじゃないかと思うくらい(!)、アメリカ生まれのアメリカ人でありながら、日本語に精通していらっしゃいます。
ご本人がもともと詩人であることは大きいのでしょう。言葉に対する感性、嗅覚がとても鋭い。そして独特の語学習得法が、とにかく片っ端から出会った言葉の意味を調べていくこと。それも表面の意味に留まらず、語源や用例もどんどん憶えていきます。人並外れた好奇心の賜物かもしれませんが、確かに知らない言葉の海を泳いでいくのって楽しい。著書からも、そのワクワク感が伝わってきます。ちなみに奥様は数々の絵本翻訳でも著名な木坂涼さん。著書を読むまでそれを知りませんでしたが、読んで得心しました。
■『日本語ぽこりぽこり』アーサー・ビナード(小学館)
by pavilion-b
| 2015-12-19 08:46
| 絵本と本のこと
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