人気ブログランキング | 話題のタグを見る

砥石もとめて

砥石もとめて_f0097528_6572817.jpg

砥部焼といえば、焼き物好きな方はよくご存知かと思います。



白磁に藍の絵柄で、ぽってりとした肉厚な肌が特徴ですね。その砥部が松山からバスで1時間弱と程近いことを知り、ぜひとも行こうと楽しみにしていました。
砥部焼は江戸時代の1777年、藩財政立て直しの命を受け、杉野丈助が焼成に成功したのが始まりとされています。丈夫で使いやすく風合いも良いことから、明治期には松山に近い松前(まさき)の港から船で全国へと運ばれ販路を広げました。

さて、松山からバスで砥部へと向かいます。風景が都心から住宅街、郊外へと変わり、市境の重信川を越えると徐々に山が近付いてきます。ポコポコと突き出した、昔話風の山々です。乗客は序盤に若い人が次々と降り、お年寄だけになり、やがて私たちだけになりました。バスはグングン細道を登ってゆきます。
終点のバス停は「断層口」。ん?断層?
どうやら砥部を目指した隊長には、密かにもうひとつの目的があったのです。それがこの「砥部衝上断層」。
砥石もとめて_f0097528_6581788.jpg

砥部は九州、四国、近畿を東西に貫く巨大断層帯「中央構造線」のほぼ真上に位置しています。おかげで原料となる陶土も得られるわけですが、それは激しい地殻変動による恩恵でもありました。
砥部には断層と直交する川のために地層が露頭している珍しい場所があります。天然記念物にも指定され、砥部衝上断層公園として整備されています。
しかし案の定、断層を見に訪れる人はめったにいません。公園を示す看板は草木に覆われ、近くでは梅採りのお婆さんと、渓流釣りのおじさんしか見かけません。でもそれだけに、清流と野鳥の声に包まれた長閑な楽園です。隊長だけはしきりに写真を撮って興奮していました。
砥石もとめて_f0097528_714054.jpg

そもそも砥部の砥は砥石の砥。古くは奈良時代の東大寺建立に関する文献にも登場し、大仏の鋳造や研磨にも伊予の砥石が使われたといわれています。人造砥石(合成砥石)が主流となった今ではあまり見かけなくなりましたが、「伊予砥」といえば以前は全国有数の砥石でした。砥部焼も、元はこの砥石の切り出し屑を有効利用するために考案されたものだったのです。
一時生産が途絶えていたという伊予砥が、現在はわずかながら復活していると聞きます。実物が見られるかもしれないと楽しみにしていたら、ありました!砥部焼観光センター「炎(えん)の里」というところで、売場の隅にひっそりと。手ごろな棒状に切り出された石が、ひとつ……1~2万円!? 隊長もさすがに買う気はなさそうでしたが、「記念だ、記念だ」と言い冷たい石肌をナデナデしていました。

←愛媛よいとこ ←三津浜焼きと麦味噌
by pavilion-b | 2016-06-17 06:58 | 旅でござんす | Comments(0)