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給水塔

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あけましておめでとうございます。
本年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。




新年最初は、はりきって名著(迷著?)のご紹介です。
その名も『団地の給水塔大図鑑』小山祐之(シカク出版)
表紙のビジュアルに惹かれて中を開けば、正しく図鑑。めくれどめくれど「給水塔」の写真ばかり……。とにかくマニア臭がすごい。
著者は日本給水党党首として実際に全国津々浦々の団地をめぐり、本著刊行までに662基もの給水塔を撮影。そのうえ団地の歴史や地域についても可能な限りデータを収集・分類し、いわば研究書としても価値があるかもしれないレベルに達しています。

「またおかしなことに熱中する人がいるなー」と半笑いでパラパラめくっていたのですが、いつの間にか真剣に見入っていました。読み込むほどに、よく練られた本だと感心したからです。
途中でハッとしたのですが、これは世界的に著名なあのベッヒャー夫妻の写真集『給水塔』のオマージュだと見てたぶん間違いないと思います。ただ、単なる模倣や二番煎じでないところがすごい。晴天にこだわり、また対象を生かすべく抑制した撮影態度、整理されつつクール過ぎないデザインなど、ユルさの裏に情熱と努力を隠しています。力作です。

たしかに給水塔ってかっこいいんですよ! 私も団地歴が長いのでよく分かります。子どものころからなんとなく畏怖の念を抱いていたし、あの象徴性も相まって心の原風景に刻まれている気がします。でもこんなにも真剣に見たことはなかった。
しかも実は給水塔はある時代に限られたもので、これから急速に失われていく風景だと気づかされ、ますます感慨なくしては見られなくなりました。灯台も同様ですが、給水塔は灯台ほど叙情的でなく、日常のすぐ隣にあるのがまた渋いですね。

日常を反転させまったく新しい風景として見せてくれる、アートのお手本のような本でもあります。

給水塔_f0097528_2113454.jpg『団地の給水塔大図鑑』小山祐之(シカク出版)
by pavilion-b | 2019-01-03 08:37 | 絵本と本のこと | Comments(0)