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女性専用車両

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たまにしか乗らないものだから。



珍しく電車で大阪へ出掛けたのです。
天王寺で地下鉄に乗り換えるとき、発車のベルが聞こえて、階段を駆け下り列車に飛び乗りました。「ふー、間に合ってよかったねー」と吊革につかまり一息。隊長は文庫本、私は中吊り広告をぼんやり。そうして揺られること数分。
「最近はやっぱり染めてない黒髪の女の人が増えたなあ」などと周りを見ながら考えていて、ふと「アレ?」と妙な感じがしたのです。右を見ても、左を見ても、後ろを見ても……

「ちょっと、コレ女性専用車両じゃない!?」
「エッ?」
私の囁きに、初めて周囲を見る隊長。マスクで口元は見えないものの、目が明らかに動揺しています。
「ほら、ドアの上にも書いてある。9時までだけど……今まだ8時45分だ」
「ど、ど、どうする??」
「次で降りて、車両を移ろう」
「そ、そ、そうね」

憐れ隊長は女性専用車両の中で、紅一点ならぬ黒一点。単なるミスとはいえ突如激しい不安と罪悪感に襲われ、隊長は次の駅に着くまでの数分間生きた心地がしなかったそうです。
ただ周囲の女性は誰も気にする様子はありません。わりと混んでいたものの、隊長を見咎めるような人もなく、平然とスマホをいじったりしていました。

駅に着くなりスッと降りて、何喰わぬ顔で隣の車両へダッシュ。今度はちゃんと男性も混じった馴染みの風景でした。それを見れば、さきほどの車内におけるそこはかとない奇妙さが改めて際立ちます。隊長はようやく息を吹き返しました。
「言われるまで全然気づかんかった……、なんちゅう恐ろしい情況……」
そこへ車内のアナウンス。
「発車間際の駆け込み乗車は、たいへん危険ですのでおやめください」
by pavilion-b | 2019-03-27 20:29 | 旅でござんす | Comments(0)