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ちょっと待って!

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思わぬ連係プレー!




自転車で信号待ちをしていたのです。ほかにも大勢の人がいました。
青信号になって皆が動きはじめたとき、最前列の自転車から何かが地面に落ちました。若いお母さんで、後ろのキャリアには小さなお子さん。落ちたのはその子に掛けていたタオルケットのようでした。

ほかにも気づいた人がいました。わたしは何も考えず、ただなんとなくそのまま前に進んだら一番近かったので、一旦止まって地面に手を伸ばし、タオルケットを拾い上げました。
そのときほぼ同時にタオルケットに吸い寄せられていた、小柄な女性と目が合ったのです。彼女もまた自転車で、タオルケットを拾うべく、サドルから降りかけた半身の状態でした。彼女はサッと態勢を直し、
「じゃ、わたしは追いかけます!」
と言うが早いか、速攻でヨーイドン!!

彼女はピューッと脱兎のごとく加速します。わたしも慌てて追いかけます。ところが思いのほかスムーズに加速できません。懸命に漕ぐも、グングン脱兎の彼女に引き離される……
それもそのはず、わたしが遅いのは片手にタオルケットを持ったままで、片手運転をしていたからだと途中で気づきました。

それでもともかく全力で漕ぎます。脱兎の彼女はますますスピードを上げ、ようやく若いお母さんの背中を捉えつつありました。
にしてもお母さん、速いな。子ども乗せてるのに。電チャリか? 子どもも、子どもよ、タオル落ちたの、見えたっしょ、ママ落ちたよとか、なんとか、言ったら、どうな、の、ヨ、ハア、ハア……

ようやく脱兎の彼女がお母さんを呼び止めたところへ、我ながらみっともないくらい息も絶え絶えなわたしが辿り着きました。「これ……、落と……、ウグ」
タオルケットを差し出されたお母さんは、すぐには状況が掴めず、目を丸くしてひと言。
「アラ」
まあ、なんていうか、無事に届けられてよかった。
そして脱兎の彼女の反射神経とスピードが、しみじみ眩しかったです。

by pavilion-b | 2020-12-08 21:42 | 奈良さんぽ | Comments(0)