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しみ

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押入れの整理をしていたら、奥底から懐かしい食器が!




長年探していたのです。五寸半くらいの、ケーキ皿。
発掘された段ボール箱を開けたのは、たぶん引っ越し以来初めて。他にも古新聞に包まれた食器がいくつか詰まっていました。ああ、ごめんなさい、こんなところにずっと……。嬉しさと申し訳なさが胸に込み上げ、思わず手を止めてしげしげとお皿を眺めました。

とにかく昔、まだ食器など買い慣れなかったころ、出会った瞬間に惹かれ、迷った末に2枚買いました。そのころの自分にはけっして安くはなかったと思います。
持ち帰り、逸る気持ちを抑えながら箱を開け、中の小さな説明書きも隅々まで読みました。そういう大人な買い物をした自分にも盛り上がっていて、箱も包み紙も何もかもがすばらしく思えました。

説明書きの通りに米のとぎ汁を用意し、大鍋に入れ、割り箸を渡した上にお皿を乗せてゆっくりと沸かし……。そんな使い始めの下処理をするのも初めてで、じっと鍋の中を見ながらいっそう浮足立ちました。
ところが。火を止めて冷めた鍋からお皿を取り出してみると、白い釉薬の地にモヤッとしたシミが!
慌てて洗ってもシミは消えません。たぶん釉薬の掛かっていない素地からとぎ汁が滲み込んだのです。でもそういうシミが付かないようにするための下処理なのでは? 悲しくて説明書きを何度も読み返すものの、やり方は特に間違ってはいません。
結局シミは取れず。くり返し洗えば徐々に薄まるかとも期待しましたが、濡れるたびにどうしてもシミは浮き上がってしまいます。でもできるだけ気にしないようにして使い続けました。ときどき悔しさと情けなさに唇を噛みつつ。

十数年ぶりに再会したお皿には、やはり因縁のシミがありました。むしろやや黄ばんでさえいます。それに思ったより平凡だったかもしれないと、正直ちょっと落胆もしました。とても好きだったけどなあ。いま見るとちょっと可愛すぎるかな……。
そうしてしばらく眺めたあと、またそっと古新聞に包み直しました。

by pavilion-b | 2021-01-13 19:29 | Comments(0)