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紳士淑女たるもの

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たしなみ、とでもいいますか。




スーパーでのこと。いつも通り野菜やら何やら籠へ入れます。特価ものを中心に。で、特価の卵も入れて。
さてレジにてお会計となり、籠から籠へ商品をピッ、ピッ。最後に卵を持った店員さん、アーと顔を顰め、大げさに上体をのけ反らせました。そしていかにも残念そうに、
「卵があ、他の商品で1,000円いかないと特価にならないんですけど、どうされますかあ?」

シマッタ。
特価の卵はいつも「卵以外で1,000円以上お買い上げの場合」という条件付きなので、もちろんそれは承知の上です。だからこの日も1,000円を超えてるつもりでした。ところがフタを開けてみれば不足。
「あと、えーっと、204円いけば、1,000円超えますけど……?」

眉を寄せ、さも自分が窮地であるかのように訴えかける店員さん。その親身さ、憐憫はひしひしと伝わります。実際こういうとき、「じゃ、ちょっと待って!」とパンなりガムなりを取りに行く人が少なからずいるのでしょう。いや、まちがいなくわたしもその口です。
ただ、このときはふと思いとどまりました。後ろに並んでいたおじさんの視線が気になったのと、204円も余計に買ったら結局損じゃなかろうか、と一瞬考えたから。

「そしたら、卵は特価の108円じゃなくて、通常価格の158円で打たせていただきますけれども、それであの、よろしいですかあ?」
いいです、いいです、それで、はいはい、ええ、構いません、大丈夫です。わたしは何度も頷き、了承した旨を伝えました。マスクをしているぶん、余計に多く頷きました。
そのあとはなんとなく気恥ずかしくて、籠を持ってちょっと離れた台まで行き、買い物袋に詰め直して店を出ました。

いやあ、でも50円のことでバタバタしなくて結果よかったよ、オトナになったよ、と自分に言い聞かせながら下る坂道。うーむ、しかし約1.5倍の価格で買うだなんて、なんと豪気な、いやたったの50円か、いやいやされど50円……。
しばらくそのことを考え続ける、ちっともオトナじゃない庶民なわたしでありました。

by pavilion-b | 2021-02-10 08:17 | Comments(0)